管理職の“罰ゲーム化”をどう防ぐか――育成負担の分散と支援
責任は重く、裁量は限られ、誰もやりたがらない。管理職の“罰ゲーム化”が進む背景と、人事ができる育成負担の分散・支援策を解説します。
「管理職にはなりたくない」。近年、こうした声が若手・中堅から聞かれることが増えました。 責任は重いのに権限や裁量は限られ、プレイヤー業務と部下育成の両方を背負わされる――いわゆる管理職の“罰ゲーム化”です。本記事では、その背景と人事ができる対策を整理します。
なぜ管理職は敬遠されるのか
- プレイングマネージャー化で、自分の業務と育成・マネジメントが二重負担になっている
- 部下の育成・メンタル対応まで求められるが、そのスキル支援はない
- 責任に見合う権限・処遇が伴っていない
特に育成負担の集中は見過ごされがちです。「育成は現場で」という方針が、実態として管理職一人への丸投げになっていないか、点検が必要です。
「抱え込み」は性格ではなく、癖として見える
管理職研修で行うインバスケット演習(限られた時間で未処理案件の優先順位を判断する演習)では、本人も自覚していない判断の癖が表に出てきます。よく現れるのは「自分で抱え込む」「部下に任せるという選択肢が最初から頭にない」という癖です。
ただし、これを「管理職に共通する性質」と言い切ることはしません。同じ系統の演習を使い続けているため、その演習の設定が引き出した反応である可能性が残るからです。別の形式でも同じ傾向が出るかは、これから確かめる段階にあります。それでも、この演習で繰り返し現れることは確かで、本人が自分の癖に気づくきっかけとしては十分に機能しています。
そして、仕事を「大きな塊」のまま抱えている限り、本人の頭には残業以外の選択肢が浮かびません。塊を分解して初めて、「これは任せられる」「これは今日でなくていい」という判断が可能になります。つまり育成負担の集中は、管理職個人の責任感や性格の問題である以前に、任せ方が設計されていないという構造の問題なのです。
分解しにくい仕事もあります。その場合も、作業そのものではなく準備・情報収集・実行・確認・記録という工程で切れないかを先に探します。集中が必要な部分の時間を先に確保し、準備や記録を他の人に渡す。同時に進める案件を減らす。
そして、それでも分けられないなら——そこは個人の工夫の問題ではありません。業務量・要員・納期の問題です。管理職の時間の使い方を改善するという話ではなく、仕事の量そのものを見直す話になります。この線引きを曖昧にしたまま「工夫で乗り切れ」と伝えることが、罰ゲーム化の一因です。
人事ができる3つの支援
1. 育成負担を「分散」する
育成を管理職一人に背負わせず、OJTトレーナーやメンターなど役割を分担する設計にします。新人指導の専任役を別に立てるだけでも、管理職の負担は大きく変わります。これは負担を「誰に振るか」だけでなく、育成の仕組みそのものをどう設計するかという問いでもあります。
2. マネジメントスキルを「支援」する
1on1、フィードバック、心理的安全性のあるチームづくり。これらは経験だけで身につくものではありません。研修やツールで支援することが、管理職の孤立を防ぎます。
3. 「育成は評価される」状態をつくる
育成への貢献が評価・処遇に反映されない限り、現場は育成を後回しにします。育成の成果を可視化し、正当に評価する仕組みが、行動を変えます。
まとめ
管理職の罰ゲーム化は、個人の根性で解決できる問題ではありません。 育成負担の分散・スキル支援・評価への接続――この3点を人事が設計することが、管理職を孤立させず、組織全体で人を育てる体制への転換点になります。ただし3つを同時に着手する必要はありません。大切なのは、項目を一度に増やすことではなく、自社ではどこから直すか=改善の順番を見極めることです。
自社がどこから手をつけるべきか=改善の順番は、OJT設計診断(無料・5分)で確かめられます。管理職・メンターの支援体制をより深く見直したい方は、無料相談からご相談ください。
この記事のまとめ
管理職の“罰ゲーム化”は、プレイヤー業務と育成の二重負担・スキル支援の欠如・権限と処遇の不足が背景です。管理職の「抱え込み」は性格の問題として片づける前に、任せ方が設計されていない構造の問題として見るべきです。研修の演習でも判断の癖として繰り返し現れます。人事にできる対策は、OJTトレーナーやメンターへの「育成負担の分散」、1on1や心理的安全性の「スキル支援」、そして「育成が評価される」状態づくりの3つです。
- ✓ 育成負担を分散する
- ✓ マネジメントスキルを支援する
- ✓ 育成が評価される状態をつくる
よくある質問
Q. なぜ管理職になりたがらない人が増えているのですか?
A. プレイングマネージャー化で自分の業務と育成が二重負担になり、部下育成やメンタル対応まで求められるのにスキル支援がなく、責任に見合う権限・処遇も伴っていないためです。特に育成負担の集中は見過ごされがちです。
Q. 管理職の育成負担を減らすために人事は何ができますか?
A. 育成を管理職一人に背負わせず、OJTトレーナーやメンターなど役割を分担する設計にします。新人指導の専任役を別に立てるだけでも、管理職の負担は大きく変わります。
Q. 育成を現場に任せるだけでよいのですか?
A. 育成への貢献が評価・処遇に反映されない限り、現場は育成を後回しにします。育成の成果を可視化し正当に評価する仕組みが、行動を変える鍵になります。
Q. 管理職が仕事を抱え込んでしまうのは、本人の性格の問題ですか?
A. 性格の問題として片づける前に、判断の癖と任せ方の設計を疑ってください。管理職研修のインバスケット演習では「自分で抱え込む」「任せる選択肢が最初から頭にない」という癖が繰り返し現れます。ただしこれを管理職に共通する性質と言い切ることはできません(同系統の演習が引き出した反応である可能性が残るためです)。実務的に確かなのは、仕事を大きな塊のまま抱えると残業以外の選択肢が消えるという点で、業務を分解して任せる設計を先に用意することが有効です。