OJTにおける心理的安全性を象徴するイラスト。トレーナーと新人が、安心した表情で対話しており、その二人を透明な保護バリアが包んでいる。バリアの外からは、恐怖や批判を象C徴する鋭いアイコンが飛んでくるが、すべて弾かれている。

【心理的安全性とOJT】部下が本音で話せる関係性を築き、成長を加速させるには

OJT OJTにおける心理的安全性を象徴するイラスト。トレーナーと新人が、安心した表情で対話しており、その二人を透明な保護バリアが包んでいる。バリアの外からは、恐怖や批判を象C徴する鋭いアイコンが飛んでくるが、すべて弾かれている。
OJTにおける心理的安全性を象徴するイラスト。トレーナーと新人が、安心した表情で対話しており、その二人を透明な保護バリアが包んでいる。バリアの外からは、恐怖や批判を象C徴する鋭いアイコンが飛んでくるが、すべて弾かれている。

「新人がなかなか質問してこない…」 「ミスをしても、ギリギリまで報告してくれない…」 「面談をしても、どこか建前で話している気がして、本音が聞けない…」

OJTトレーナーとして、部下との間にこのような「見えない壁」を感じたことはありませんか?

もし、あなたがこのような悩みを抱えているなら、その根本原因は、あなたの指導スキルや部下の意欲の問題ではなく、二人の間に「心理的安全性」が欠けていることにあるのかもしれません。

心理的安全性とは、ひと言でいえば「このチーム(この人の前)では、どんな発言をしても大丈夫だ」と、メンバーが心から思える安心感のことです。

この記事では、OJTの成功を左右するこの「心理的安全性」を高め、部下が安心して本音を話し、のびのびと挑戦できる関係性を築くための具体的な方法を徹底解説します。

小手先の指導テクニックよりも、まずこの土台を築くことが、部下の成長を加速させる最短ルートなのです。


あなたのOJTがうまくいかない根本原因、「心理的安全性」の欠如かも?

OJTにおける心理的安全性の有無を対比したイラスト。上のパネルでは、トレーナーと新人がアイデアを出し合いながら和やかに会話し、下のパネルでは、新人が口に南京錠をかけられて本音を言えずに悩んでいる。

導入文で触れた「見えない壁」の正体、それが「心理的安全性」です。これは、近年の組織論において最も注目されている概念の一つであり、OJTの成否を根底から支える、いわば「土壌」のようなものです。

この土壌が痩せていては、どんなに立派なOJT計画も、トレーナーの熱意も、効果を発揮することはできません。

この章では、まず心理的安全性とは何かを正しく理解し、それが欠如したOJTがどのような悲劇を招くのかを見ていきましょう。


「心理的安全性」とは?Googleが発見した「成功するチーム」の共通点

心理的安全性とは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授によって提唱された概念で、「チームの中で、自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態」を指します。

ひらたく言えば、「こんな初歩的な質問をしても、馬鹿にされないだろうか」「反対意見を言っても、人間関係が悪くならないだろうか」「ミスを正直に報告しても、激しく叱責されないだろうか」といった不安を、メンバーが感じることのない状態のことです。

この概念が一躍有名になったのは、Google社が行った「プロジェクト・アリストテレス」という大規模な調査がきっかけです。Googleは、成功するチームの共通点を分析した結果、チームメンバーの能力や経歴以上に、「心理的安全性の高さ」こそが、チームの生産性を左右する最も重要な因子であることを発見しました。


心理的安全性が低いOJTで起こる3つの悲劇

この心理的安全性が、OJTの場、特にトレーナーと新人の一対一の関係において欠如していると、以下のような深刻な「悲劇」が起こります。

  • 悲劇①:質問・相談ができず、ミスが深刻化する 新人は「分からない」ということを言い出せず、自己判断で業務を進めてしまいます。その結果、小さなミスが発生しても、叱責を恐れて報告が遅れ、最終的に取り返しのつかない大きな問題へと発展してしまうのです。
  • 悲劇②:挑戦を恐れ、新人の成長が止まる 「失敗したら怒られる」という空気が支配するOJTでは、新人はマニュアルに書かれた最低限の業務しか行わなくなります。新しいやり方を試したり、少し難易度の高い仕事に挑戦したりといった、成長に不可欠な「越境行為」を恐れるようになり、成長は早い段階で頭打ちになります。
  • 悲劇③:本音を言えず、エンゲージメントが低下し早期離職 面談の場で、新人が当たり障りのない「大丈夫です」「頑張ります」しか言わない。それは、本音を言うことへの諦めのサインかもしれません。自分の悩みやキャリアへの思いを誰にも話せず、組織への所属意識(エンゲージメント)は低下し、静かに転職活動を始めてしまうケースは後を絶ちません。

このように、心理的安全性の欠如は、単に「職場の雰囲気が悪い」というレベルの話ではなく、OJTの目的そのものを根底から覆してしまう、極めて深刻な問題なのです。

幸いなことに、心理的安全性は、トレーナーの意識的な行動によって、着実に高めていくことが可能です。次の章では、そのための具体的な5つのアクションをご紹介します。


【明日からできる】OJTで心理的安全性を高める5つの具体的行動

心理的安全性を高める5つの具体的行動をツールボックスの道具に見立てたイラスト。道具箱には、「自己開示(ハート)」「質問歓迎(?マーク)」「ミスの探求(虫眼鏡)」「感謝と承認(いいね)」「雑談(コーヒーカップ)」を表す5つのアイコンが入っている。

心理的安全性の重要性を理解したとしても、「具体的に何をすればいいの?」と感じるかもしれません。

ご安心ください。心理的安全性を高めるための特別なスキルや才能は必要ありません。明日からあなたのOJTの現場で実践できる、具体的でシンプルな5つの行動をご紹介します。


行動①:完璧なトレーナーを演じない。「自己開示」で弱みを見せる

新人は、完璧に見える先輩トレーナーに対して、質問しにくいと感じるものです。「この人に質問しても大丈夫かな?」「こんなこと聞いたら、自分の能力を疑われるかも…」といった不安を抱かせないために、あえて自分の失敗談や、かつて自分が悩んだ経験などを共有してみましょう。

  • 例: 「実は、私も入社したての頃は、〇〇の操作をよく間違えて、先輩に迷惑をかけたんだよね。だから、もし同じように困ったら、遠慮なく聞いてね。」

完璧な指導者像を演じるよりも、人間味あふれる一面を見せることで、新人はあなたに親近感を覚え、安心して頼ることができるようになります。


行動②:「こんなことも知らないの?」と思わない。あらゆる質問を歓迎する

新人の質問に対して、心の中で「え、そんな基本的なこと?」と思っても、それを表情や態度に出してはいけません。どんな質問に対しても真摯に向き合い、「いい質問だね」「疑問に思うことはどんどん聞いてね」といった肯定的な言葉で応えましょう。

もし、何度も同じ質問が出たとしても、決して嫌な顔をせず、根気強く丁寧に説明することが大切です。新人が安心して質問できる雰囲気を作ることが、心理的安全性の第一歩です。


行動③:ミスを「追求」せず、学びの機会として「探求」する

新人がミスをした時、頭ごなしに叱責したり、原因を一方的に問い詰めたりするのではなく、「どうしてこうなったと思う?」「次に同じミスをしないためには、どうすればいいかな?」と、一緒に原因を探り、改善策を考える姿勢を示しましょう。

ミスを「責める対象」ではなく「学びの機会」として捉えることで、新人は安心してミスを報告し、そこから成長することができます。大切なのは、「ミスを隠す」ことよりも「ミスから学ぶ」ことであるというメッセージを、日々のOJTを通して伝えることです。


行動④:「ありがとう」を具体的に伝える。「感謝」と「承認」の力

新人が何かをやり遂げた時、たとえ小さなことでも、「〇〇さん、この資料作成、期日通りにありがとう。おかげで明日の会議の準備が助かるよ」「〇〇の電話応対、さっき聞いてたけど、すごく丁寧だったね。お客様も安心したと思うよ」のように、具体的な行動と結果に結びつけて感謝の気持ちを伝えましょう。

また、「〇〇ができるようになったね」「〇〇の理解度が深まってきたね」といった成長を認める言葉も、新人の自信とモチベーションを高めます。日々のOJTの中で、「感謝」と「承認」の言葉を意識的に使うことが、心理的安全性の高い関係を築く上で不可欠です。


行動⑤:「報・連・相」を求めすぎない。「雑談・相談」の時間を意図的に作る

業務の進捗確認としての「報・連・相」は重要ですが、それだけでは新人の本音や不安はなかなか見えてきません。意識的に、業務とは直接関係のない「雑談」や「相談」の時間をOJTの中に組み込んでみましょう。

  • 例: 「週末は何してた?」「何か困っていることはない?仕事のこと以外でも、何かあればいつでも相談してね。」

このような会話を通じて、トレーナーは新人の人となりや抱えている悩みを知ることができ、新人にとっても、単なる業務指導者ではない、人間的な繋がりを感じられる存在となります。


部下のタイプ別に見る、心理的安全性の「ツボ」

部下のタイプ別に心理的安全性のツボを押さえることを象徴するイラスト。特徴の異なる3つの錠前(頑丈、装飾的、シンプル)と、それぞれに合った鍵(盾、王冠、吹き出しのアイコン付き)が描かれており、タイプに合わせたアプローチの重要性を示している。

前章で解説した5つの行動は、あらゆる部下に対して有効な基本原則です。しかし、より早く、より深く信頼関係を築くためには、相手の性格やタイプに合わせて、特に響きやすい「ツボ」を心得ておくと効果的です。

ここでは、代表的な3つのタイプ別に、心理的安全性を高めるためのアプローチの「ツボ」をご紹介します。


真面目で慎重な部下には「失敗しても大丈夫」という安心感を

責任感が強く、完璧主義な一面を持つ「慎重派」の部下は、「ミスをしてはいけない」というプレッシャーを人一倍感じています。彼らにとって、心理的安全性の最大の障壁は「失敗への恐怖」です。

  • 効果的なアプローチ:
    • 失敗の許容を明言する: 新しい仕事を任せる際に、「これは初めてだから、失敗して当たり前だよ」「もし困ったら、私がすぐにサポートするから大丈夫」と、失敗を恐れなくてよいことを明確に伝えましょう。
    • プロセスを褒める: 結果だけでなく、「〇〇の資料、すごく丁寧に準備してくれたんだね。その慎重さが君の強みだ」と、仕事のプロセスや姿勢を承認することで、彼らは安心して業務に取り組めます。

プライドが高い部下には「尊敬」の念と「頼る」姿勢を

能力が高く、自信家な一面を持つ「プライドが高い」タイプの部下は、「できない自分」を見せることに強い抵抗感があります。「質問する=無能だと思われる」という恐れから、一人で問題を抱え込んでしまうことがあります。

  • 効果的なアプローチ:
    • 教えるのではなく、意見を求める: 「〇〇について、君の視点からアドバイスをもらえないかな?」と、相手の能力を尊重し、意見を求める形で関わります。
    • あえて頼ってみせる: 「この分野は、私より君の方が詳しいだろうから、少し教えてほしいんだけど…」と、こちらから頼る姿勢を見せることで、彼らは自尊心を満たされ、心を開きやすくなります。

おとなしい部下には、こちらから「問いかける」頻度を増やす

自分の意見や感情をあまり表に出さない「おとなしい」タイプの部下は、心の中に多くの考えや疑問を秘めている可能性があります。彼らは、自ら発信することに遠慮しがちなため、「何か質問ある?」という漠然とした問いかけだけでは、なかなか本音は出てきません。

  • 効果的なアプローチ:
    • 具体的な問いかけを増やす: 「今やってる作業、どの部分が一番面白い?」「もし何か一つ改善できるとしたら、どこだと思う?」など、答えやすい具体的な質問で、話す「きっかけ」をこちらから作りましょう。
    • 沈黙を恐れない: 問いかけた後、すぐに答えが返ってこなくても、急かさずにじっくり待ちましょう。彼らが自分の考えをまとめるための「間」を尊重する姿勢が、安心感に繋がります。

これらの「ツボ」を意識することで、あなたのメッセージはより深く部下の心に届き、心理的安全性の高い関係を築くための時間を短縮できるはずです。


心理的安全性の高いOJTが、トレーナー自身と組織にもたらす好循環

心理的安全性がもたらす好循環を象徴するイラスト。3つの歯車が噛み合っており、それぞれに「成長する部下」「安心するトレーナー」「発展する組織」を表すアイコンが描かれ、ポジティブな影響が連鎖している様子を示している。

心理的安全性を高めることは、もちろん第一に、OJTを受ける部下や新人のためです。しかし、その効果は決してそれだけではありません。安全な関係性を築くことは、指導するトレーナー自身、そして会社という組織全体にも、計り知れないメリットをもたらすのです。

  • トレーナー自身へのメリット: 部下がミスを隠さず、すぐに報告・相談してくれるため、「何か問題が起きているのではないか」というトレーナーの余計なストレスや不安が激減します。また、本音の対話ができることで、部下の状況を正確に把握でき、より的確で効率的な指導が可能になります。これにより、指導にかかる時間と精神的な負荷が軽減され、トレーナーは自身の業務にも集中できるようになります。
  • 組織全体へのメリット: 心理的安全性の高い環境で育った新人は、会社へのエンゲージメントが高まり、早期離職のリスクが大幅に低下します。さらに、「こんなことを言ったら生意気だと思われるかも」という恐れがなくなるため、新人ならではの新鮮な視点から「もっとこうすれば良くなるのでは?」といった改善提案や、新しいアイデアが生まれやすくなります。この小さなイノベーションの種が、組織全体の生産性を高め、成長を促すのです。

そして何より、心理的安全性の高いOJTを経験した新人は、やがて自分がトレーナーになった時、同じように心理的安全性を大切にする指導者となります。こうして、人を育て、挑戦を歓迎するポジティブな文化が、組織の中に好循環として定着していくのです。


まとめ:心理的安全性は、全てのOJT施策の土台となる「インフラ」である

本記事では、OJTの成否を左右する「心理的安全性」の重要性から、それを高めるための具体的な5つの行動、そして部下のタイプに合わせたアプローチまでを解説してきました。

様々なOJTのテクニックやフレームワークが存在しますが、心理的安全性は、それらの一つではありません。

心理的安全性は、全てのOJT施策が効果的に機能するための、最も重要な土台となる「インフラ」です。このインフラがなければ、どんなに優れたOJT計画も、どんなに有益なフィードバックも、その効果を十分に発揮することはできません。

トレーナーであるあなたに求められるのは、完璧な指導者であることではありません。ほんの少しの勇気を持って弱みを見せ、部下のどんな発言にも真摯に耳を傾け、失敗を成長の機会として捉える。その日々の小さな行動の積み重ねが、やがて強固な信頼関係というインフラを築き上げるのです。

まずは明日、部下が何かを報告してくれた時、内容を評価する前に、「話してくれて、ありがとう」と伝えてみてください。

その一言が、部下が安心して本音を話せる、豊かな土壌を育む最初の一歩となるはずです。

OJTにおける心理的安全性を象徴するイラスト。トレーナーと新人が、安心した表情で対話しており、その二人を透明な保護バリアが包んでいる。バリアの外からは、恐怖や批判を象C徴する鋭いアイコンが飛んでくるが、すべて弾かれている。
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