OJTトレーナーを庭師に見立てたコンセプトのイラスト。トレーナーが、鉢植えの小さな植物(部下・新人)が自ら育つのを、優しく見守りながら手入れしている。

OJTトレーナー必見!部下を「自ら育つ」人材にする育成術とコミュニケーションの秘訣

OJT OJTトレーナーを庭師に見立てたコンセプトのイラスト。トレーナーが、鉢植えの小さな植物(部下・新人)が自ら育つのを、優しく見守りながら手入れしている。
OJTトレーナーを庭師に見立てたコンセプトのイラスト。トレーナーが、鉢植えの小さな植物(部下・新人)が自ら育つのを、優しく見守りながら手入れしている。

「部下の指導に時間を取られ、自分の仕事が全く進まない…」 「良かれと思って丁寧に教えたら、かえって指示待ち人間になってしまった…」 「最近は『パワハラ』と言われないか、コミュニケーション自体が怖い…」

OJTトレーナーを任されたあなたは、このような悩みを抱えていませんか?部下育成はやりがいのある仕事ですが、その責任の重さや難しさに、一人で頭を抱えている方も少なくありません。

もし、あなたの部下が「自ら育ち」、あなたの手を少しずつ離れて、やがて独り立ちしていくとしたら、どうでしょうか。

この記事は、そんな理想を実現するための、OJTトレーナー育成の具体的なノウハウを詰め込んだ一冊です。単に業務を「教える」だけでなく、部下の主体性を「引き出す」ための具体的なコミュニケーション術と、育成の秘訣を徹底的に解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたは部下育成への不安が自信に変わり、「育てるって、面白い」と感じられるようになっているはずです。

目次

「教える」のがうまいだけではダメ?イマドキのOJTトレーナーに求められる役割

ティーチングとコーチングの違いを表すイラスト。左側では一人が本からもう一人の頭に情報を注ぎ込み、右側では二人が対話し、疑問とひらめきが生まれている。

「うちのOJTトレーナーは、自分の仕事で手一杯なのに、新人の面倒まで見なきゃいけなくて大変そう…」 「せっかく時間をかけて教えたのに、すぐに『これ、どうすればいいですか?』と聞いてくる。自分で考えることをしないんだよなぁ…」

OJT担当者や管理職の皆様から、このような声もよく聞かれます。

一昔前までは、OJTトレーナーといえば、自身の高いスキルと豊富な知識を新人に「教え込む」役割が中心でした。分かりやすく丁寧に教えることが、優秀なトレーナーの証とされていた時代です。

もちろん、業務の基本や手順を正確に伝える「ティーチング」のスキルは、今もOJTにおいて非常に重要です。土台となる知識がなければ、その上に成長を築くことはできません。

しかし、現代のVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)と呼ばれる予測困難なビジネス環境においては、過去の成功体験やマニュアル通りの知識だけでは対応できない場面が格段に増えました。

また、新入社員の価値観も多様化し、「言われたことをこなす」だけでなく、「自分で考え、主体的に成長したい」という意欲を持つ人材が増えています。

このような変化に対応するため、現代のOJTトレーナーに求められる役割は、従来の「教える」中心の指導から、部下の潜在能力を引き出し、「自ら育つ」力を育むためのサポートへとシフトしています。

その鍵となるのが、「コーチング」という考え方です。

【ポイント】OJTにおける「ティーチング」と「コーチング」の役割

  • ティーチング: 知識やスキルを直接的に教え、理解を深める。業務の基礎を習得させる上で不可欠。例:業務手順の説明、ツールの使い方指導
  • コーチング: 対話を通じて部下の内発的な動機を引き出し、自律的な成長を促す。考える力、問題解決能力、主体性を育む。例:「〇〇について、あなたはどう思いますか?」「それを実現するために、どんな方法が考えられますか?」

これからのOJTトレーナーは、状況に応じてティーチングとコーチングを柔軟に使い分け、「教える」だけでなく「引き出す」スキルを磨くことが求められます。

それでは、具体的にどのようにすれば、OJTトレーナーは部下の主体性を引き出し、「自ら育つ」人材を育てることができるのでしょうか?

次の章では、明日からすぐに実践できる、部下の成長を加速させる7つのコミュニケーション術を詳しく解説していきます。

部下の主体性を引き出す!明日から使える7つのコミュニケーション術

部下の主体性を引き出す7つのコミュニケーション術を象徴するイラスト。中心から放射状に伸びる線と、その周りに配置された疑問符、上向き矢印、グッドサイン、耳、向き合う二人、保護する手、チャットバブルのアイコンが描かれている。

OJTトレーナーの役割が、従来の「ティーチング」から「コーチング」へとシフトしていることをご理解いただけたかと思います。しかし、「具体的にどうすれば?」と、コミュニケーションの取り方に悩む方も多いでしょう。

難しく考える必要はありません。

部下の主体性を引き出すコーチングの第一歩は、日々の何気ないコミュニケーションを少しだけ変えることから始まります。

この章では、部下の「自ら育つ力」をONにする、明日からすぐに使える7つの具体的なコミュニケーションの秘訣をご紹介します。


秘訣1:「指示」を「問いかけ」に変えるだけで、部下は考え始める

部下が自分で考えなくなる一番の原因は、トレーナーが答えを与えすぎてしまうことです。まずは、具体的な「指示」や「命令」を、相手に考えさせる「問いかけ」に変えてみましょう。

  • Before(指示): 「この資料、A社のフォーマットに合わせて修正しておいて。」
  • After(問いかけ): 「この資料をA社に提出するんだけど、どんな点に注意したらもっと良くなると思う?」

このように問いかけることで、部下は「ただの作業」ではなく「自分の仕事」として捉え、思考を巡らせ始めます。


秘訣2:失敗を「最高の学習機会」に変える、ポジティブな関わり方

新人の失敗はつきものです。その時、トレーナーがどう関わるかで、失敗が「トラウマ」になるか「学習機会」になるかが決まります。重要なのは、原因追及や詰問ではなく、未来志向の質問をすることです。

  • NGな質問: 「なんでミスしたの?」
  • OKな質問: 「この経験から、次に活かせることは何だろう?」「もし次、同じことをするとしたら、どんな工夫をする?」

失敗を責めずに、そこからの学びを一緒に考える姿勢が、部下が挑戦を恐れないマインドを育みます。


秘訣3:モチベーションの源泉となる「褒め方」と「承認」の技術

「よくやったね!」という漠然とした褒め言葉も嬉しいものですが、部下のモチベーションを本当に高めるのは、具体的な「承認」です。

トレーナーが「あなたのことを見ていますよ」というメッセージを伝えることが重要です。

  • Before(漠然): 「今日のプレゼン、良かったよ!」
  • After(具体的): 「今日のプレゼン、特に〇〇の部分で自社の強みを具体的なデータで示していたのが素晴らしかった。あのおかげで、お客様も納得していたよ。」

結果だけでなく、そのプロセスや工夫した点を具体的に承認することで、部下は「次も頑張ろう」と意欲を高めます。


秘訣4:部下が本音を話し出す「傾聴」の3つのレベル

部下との信頼関係の土台は「聴く」ことです。

ただ相槌を打つだけでなく、相手の言葉の背景にある感情や意図まで深く理解しようと努める「傾聴」を意識しましょう。

  • レベル1:内的傾聴 自分の考えや次に言うことを気にしながら聞いている状態。
  • レベル2:集中的傾聴 相手に意識を集中させ、表情や声のトーンも含めて熱心に聞いている状態。
  • レベル3:全方位的傾聴 相手の言葉だけでなく、その場の雰囲気や、相手が「言わなかったこと」まで感じ取ろうとする聞き方。

まずは、自分の考えを一旦脇に置き、相手に100%集中する「レベル2」を実践するだけでも、部下は「しっかり話を聞いてもらえている」と安心感を抱きます。


秘訣5:「1on1ミーティング」をただの進捗確認で終わらせない方法

定期的な1on1は、部下の状況を把握し、成長を支援する絶好の機会です。しかし、それがトレーナーからの「進捗どう?」という確認だけで終わってしまっては、その効果は半減します。

1on1の主役は、あくまで部下です。アジェンダもできるだけ部下に委ね、「最近、仕事で困っていることは?」「何か挑戦してみたいことはある?」「私のサポートで、もっとできることはあるかな?」といった、部下の成長やキャリアに焦点を当てた問いかけを心がけましょう。


秘訣6:信頼関係の土台となる「心理的安全性」の高め方

「こんな初歩的な質問をしたら、呆れられるかもしれない」「反対意見を言ったら、生意気だと思われるかもしれない」——。部下がこのように感じている状態では、本音の対話は生まれません。

心理的安全性とは、「このチームなら、どんな発言をしても拒絶されたり、罰せられたりしない」と信じられる状態のことです。これを高めるには、まずトレーナー自身が完璧ではない姿を見せること(自己開示)が有効です。

「実は私も新人の頃、同じミスをしたことがあってね…」と自身の失敗談を話すことで、部下は「自分だけじゃないんだ」と安心して、弱みを見せやすくなります。


秘訣7:リモートでも安心感を与えるコミュニケーションのコツ

リモートワークでは、相手の様子が見えない分、より丁寧で意図的なコミュニケーションが求められます。

  • テキストの工夫: 「〇〇の件、お願いします」だけだと冷たい印象に。「〇〇さん、お疲れ様です!急ぎではないのですが、お手すきの際に〇〇をお願いできますか?」のように、一言クッション言葉を添えるだけで、印象は大きく変わります。
  • リアクションの徹底: 部下からの報告や連絡には、スタンプ一つでも良いので必ずリアクションを返しましょう。「既読スルー」が、部下の不安や孤独感を最も増幅させます。
  • 雑談の機会創出: 業務連絡だけでなく、意識的に雑談を振ることも大切です。チャットで「週末はどうだった?」と聞いたり、数分でも雑談だけのビデオ通話をしたりすることで、人間関係が深まります。

これらの7つの秘訣は、どれも特別なスキルが必要なものではありません。明日からのコミュニケーションで、一つでも意識して使ってみることで、あなたと部下の関係性は確実に変わっていくはずです。

【タイプ別】部下の強みを活かす関わり方のヒント

部下のタイプ別に指導法を変えるOJTトレーナーのイラスト。トレーナーが、慎重な部下、行動的な部下、アイデアマンの部下に対し、それぞれ異なる道具を使い分けようとしている。

前章で紹介した7つのコミュニケーション術は、あらゆる部下に対して有効な基本姿勢です。しかし、人間の個性は千差万別。より効果的に部下の成長を促すには、相手のタイプや特性に合わせたアプローチを加えることが有効です。

これは部下に「ラベルを貼る」のが目的ではありません。あくまで、トレーナーであるあなたが、相手に合わせて関わり方の引き出しを増やすためのヒントです。ここでは代表的な3つのタイプをご紹介します。

慎重派の部下には「安心感」と「具体的な見通し」を

石橋を叩いて渡る「慎重派」タイプは、物事を深く考え、丁寧で正確な仕事を得意とします。一方で、見通しが立たないことや、リスクに対して不安を感じやすい傾向があります。

  • 特徴: 細かい点まで確認しないと不安、行動する前にじっくり考えたい、完璧主義な一面がある。
  • 効果的な関わり方:
    • 見通しを示す: 仕事を依頼する際は、ゴールだけでなく、手順や中間目標を具体的に示し、「まずはここまでやってみよう」とスモールステップで進めると安心します。
    • 質問を歓迎する: 彼らの細かい質問は、やる気がないからではなく、不安だからこそです。「良い質問だね」と歓迎し、納得いくまで丁寧に答えましょう。
    • 準備時間を与える: 新しい仕事やプレゼンなどを任せる際は、じっくり準備できる時間を確保してあげると、質の高いアウトプットを出してくれます。

行動派の部下には「裁量」と「挑戦の機会」を

まずやってみよう、とすぐに行動に移せる「行動派」タイプは、経験から学ぶ力が高く、チームの推進力になります。一方で、時に見切り発車で細部がおろそかになったり、振り返りが苦手だったりする面もあります。

  • 特徴: とにかくやってみたい、スピード感がある、細かい作業や計画が少し苦手。
  • 効果的な関わり方:
    • まず任せてみる: 細かく指示しすぎず、「このゴールを目指して、やり方は任せるよ」とある程度の裁量を与えると、主体性が輝きます。
    • 少し背伸びした仕事を与える: ルーティンワークが続くと飽きてしまう傾向があるため、時々新しいことや少し難易度の高い「挑戦の機会」を提供すると、モチベーションが上がります。
    • 「振り返り」をセットにする: 行動した後は、必ず「やってみてどうだった?」「そこから何が学べた?」と問いかけ、経験を次に活かすための振り返りをセットで行う習慣をつけさせましょう。

アイデアマンの部下には「承認」と「壁打ち相手」を

既成概念にとらわれず、新しい発想や改善案を出すのが得意な「アイデアマン」タイプ。その創造性はチームの武器になりますが、アイデアが発散したまま実行に移すのが苦手な場合もあります。

  • 特徴: 新しいものが好き、発想がユニーク、「こうしたらもっと良くなるのに」とよく考えている。
  • 効果的な関わり方:
    • アイデアを面白がる: 彼らのアイデアを「現実的じゃない」とすぐに否定せず、「面白いね!もっと詳しく聞かせて」とまずは受け止め、承認することが重要です。
    • 壁打ち相手になる: アイデアを具体的な形にするための「壁打ち相手」になってあげましょう。「そのアイデアを実現するには、まず何から始められそう?」「誰を巻き込むと良さそうかな?」と一緒に考えることで、アイデアが企画へと磨かれていきます。
    • 実行とセットで評価する: アイデアを出すだけでなく、それを実行に移すことの重要性を伝え、実行まで含めて評価する姿勢を見せることが、彼らを企画実行人材へと成長させます。

これらのタイプ別の関わり方を参考に、あなたの目の前にいる部下一人ひとりに合わせたコミュニケーションを心がけてみてください。

OJTトレーナーは損な役回り?部下育成で得られる自身の成長とメリット

OJTトレーナーの自己成長を象徴するイラスト。先輩が後輩の手を取り階段の上段へ引き上げており、二人で一緒にキャリアの階段を上っている。

「自分の仕事に加えて、新人の面倒まで見なければならない…」 OJTトレーナーを任された時、正直に言って「負担だ」「損な役回りだ」と感じてしまうこともあるかもしれません。

しかし、多くのビジネスリーダーが口を揃えて言う言葉があります。それは「育成において、最も成長するのは教える側である」ということです。

部下育成という経験は、あなたの市場価値を高め、キャリアを切り拓くための絶好の機会です。この章では、OJTトレーナーが享受できる3つの大きなメリットをご紹介します。


メリット1:マネジメントスキルの実践的なトレーニングになる

OJTトレーナーの経験は、まさに「マネジメントの予行演習」です。部下一人を育成するプロセスには、将来チームリーダーや管理職に求められるスキルの多くが凝縮されています。

  • 目標設定・計画策定能力: 部下の成長ゴールを設定し、そこから逆算して育成計画を立てる経験。
  • ティーチング・コーチング能力: 相手に合わせて指導し、モチベーションを引き出すコミュニケーションスキル。
  • 進捗管理・問題解決能力: 計画通りに進んでいるかを確認し、課題があれば解決策を共に考える経験。

これらは座学の研修だけでは決して身につかない、極めて実践的なマネジメントスキルです。


メリット2:業務の属人化が解消され、自分の時間が増える

「自分がやった方が早い」と感じ、仕事を抱え込んでいませんか? 部下に教えるプロセスは、あなた自身の業務を見直し、標準化する絶好の機会です。

業務を言語化し、マニュアルに落とし込むことで、これまであなた個人の経験や勘に頼っていた仕事が「誰でもできる仕事」に変わります。

最初は教えるのに時間がかかりますが、部下がその業務を覚えてくれれば、あなたは安心して仕事を任せられるようになります。結果として、あなたはより付加価値の高い創造的な仕事に時間を使うことができるようになるのです。


メリット3:組織への貢献が評価され、キャリアアップに繋がる

新人を一人前に育てることは、個人のタスクをこなす以上に、組織に対するインパクトの大きい貢献です。そのプロセスと成果は、あなたの上司や経営層も見ています。

一人のプレイヤーとして優秀なだけでなく、「人を育てられる」という実績は、あなたのリーダーシップポテンシャルの何よりの証明となります。この経験は、将来の昇進や、より責任のあるポジションを任される際の、強力なアピールポイントになるでしょう。

部下のキャリア開発を真剣に考える経験は、巡り巡ってあなた自身のキャリアを豊かにしてくれるのです。

まとめ:部下を育て、自分も育つ。OJTトレーナーは最高の成長機会

この記事では、OJTトレーナーが直面する課題から、部下の主体性を引き出すための具体的なコミュニケーション術、相手のタイプに合わせた関わり方、そしてトレーナー自身が得られる成長とメリットまで、多角的に解説してきました。

現代のOJTトレーナーに求められるのは、単に正解を「教える」だけの存在ではありません。対話を通じて部下の可能性を「引き出し」、彼らが「自ら育つ」ための環境を整える成長の伴走者です。

はじめは「負担だ」「損な役回りだ」と感じていたかもしれません。しかし、部下の成長に真剣に向き合う経験は、あなたのマネジメント能力を飛躍的に高め、業務の標準化を進め、ひいてはあなた自身のキャリアを豊かにする、またとない機会です。

部下が自ら考え、行動し、成功体験を積んでいく姿を見ることは、何物にも代えがたい喜びとやりがいをあなたにもたらすでしょう。

難しく考える必要はありません。まずは明日、部下への「指示」を一つだけ、「君ならどう思う?」という「問いかけ」に変えてみることから始めてみませんか。

その小さな一歩が、部下の、そしてあなた自身の未来を切り拓く大きな変化に繋がっていきます。OJT.Lifeは、部下育成に挑戦するすべてのトレーナーを応援しています。

OJTトレーナーを庭師に見立てたコンセプトのイラスト。トレーナーが、鉢植えの小さな植物(部下・新人)が自ら育つのを、優しく見守りながら手入れしている。
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